東京オリンピックとアリス・コルトレーン
東北地方の方言に「てんでんこ」という言葉があります。何か災害が発生した場合には、家族や集団よりも、まず自分を優先させて避難しよう。個人がそれぞれ、そうすることによって、家族や集団も助かるかも知れない。そういう意味かと思います。非情なようですが、今はそういう時期かも知れません。私たち個人は、そうしないと命が守れません。
コロナ禍で東京オリンピックが開催されている現在、良くも悪くも、想像した通りのことが起こっています。アクセルとブレーキを同時に踏み込んでいるような現在の状況。冷静であることは非情に難しい。
そんな中、ユニバーサルミュージックのインパルスレーベルが60周年を迎えたということで、ジャズミュージシャンのアルバムが復刻されているという知らせを受けて、ジョン・コルトレーンの奥さんであるアリス・コルトレーンのアルバム「キルタン~トゥリヤ・シングス」を入手しました。
ジョン・コルトレーン(1926~1967)は米国ノースカロライナ州の出身、1960年代に活躍したサックス奏者で、1964年のアルバム「至上の愛」が有名です。精神性の高いアルバムとして評価されています。その奥さんであるアリス・コルトレーン(1937~2007)は米国ミシガン州出身、ピアノ・ハープ奏者であり、ジョン・コルトレーンと出会ったのは1963年頃、結婚したのは1965年。1967年に夫であるジョン・コルトレーンは他界していますから、いっしょに活動したのはわずかに4年間位しかありません。アリスは前夫との子(娘)のほかに、ジョンとの子(3人の息子たち)を育てながら、ジョンの意志を継いで音楽活動を続けました。
アリスはヒンズー教徒であり、日曜日の礼拝で講話を行い、オルガンを弾き、合唱を指導しました。このアルバム「キルタン~トゥリヤ・シングス」はそのような環境の中で1981年頃に作られました。教会の信徒の間にカセットテープで配布されていたものですが、今回、ひとつの宗教にとらわれない聖なる音楽、つまりスピリチュアル音楽として捉え直し、再編集してリリースされることになりました。
アルバムには、この音楽の背景や歌詞が記されており、ジョンとアリスの子供であるラヴィとミシェルによる解説も記されています。ジョンとアリスは、私の両親とほぼ同世代であり、その子供であるラヴィとミシェルは私とほぼ同世代です。家族で音楽が継承されて、古くても新しいアルバムが世界じゅうにリリースされました。
オルガンを弾きながら、とつとつと歌うアリスの姿に感動しました。ジャズミュージシャンのアリスを知らないと、この感動は伝わらないかも知れません。聴いていると、呼吸が深く静かになり、夢か現つかの気分となり、淡い悲しみと慈しみを感じ、冷静さを取り戻していくような感じがします。
写真は、ユニバーサルミュージック アリス・コルトレーン 「キルタン~トゥリヤ・シングス」CD
東芝EMI ジョン・コルトレーン 「至上の愛」LPレコード
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