リンパ浮腫について 3

リンパ浮腫の合併症
①蜂窩織炎(ほうかしきえん)
私が見た患者さんの中で一番症例が多かったのが蜂窩織炎です。リンパ浮腫患者の半数以上が経験するもので、患肢に赤い斑点や広範囲の発赤がみられ、38℃以上の高熱が出て痛みを伴うことが多いようです。リンパ管炎や丹毒という病名で診断されることもあり、正確にはそれぞれ違うものの、原因は同じ細菌感染であり、白血球が増加し、炎症反応(CRP)が高値になるため治療法は同じです。
蜂窩織炎の対処方法は、リンパドレナージやバンデージ、弾性圧迫衣などによる圧迫など、それまで行っていた患肢の施術を中止して、抗生物質の投与と安静により数日で改善します。ただ、疼痛が強く入院が必要なこともあります。
予防法としては、皮膚に傷がつくこと(鍼灸治療やカミソリで毛剃りすることなど)をさける必要があります。しかし明らかな感染源のない症例も多く、そのような場合は膀胱炎や口腔内感染症など他部位の感染から血行性に細菌が侵入したことも考えられるため、実際には患肢にだけ気をつければよいというものでもありません。
蜂窩織炎のきっかけとして、温泉やプールに入った後や、強い力でマッサージを受けた後や、波動型マッサージ器を長時間使用した後という場合もあります。
罹患後、リンパドレナージなどを開始する目安は、医師による血液検査の数値が正常化してからということになります。

②急性皮膚炎
浮腫発症早期や浮腫の急激な憎悪期に、蜂窩織炎と同様に患肢全体の発赤や軽度の痛みや熱感がみられるものの、熱は全身に及ばず、体温は変わらず、血液検査でも白血球の増加はみられず、炎症反応(CRP)の上昇もみられない。抗生物質を長期間投与しても改善がみられない。そんな症状をいいます。
このような場合は、抗生物質を長期間投与することはさけて、リンパドレナージなどは続けたほうがいいようです。
ただ、リンパ管へのがんの再発でも同じように発赤が強くなることがあるため、悪性腫瘍治療後のリンパ浮腫患者で、急激に発熱と腫脹が強くなった場合には、再発したかどうか検査が必要です。これらはもちろん医師の判断によります。

③リンパ漏・皮膚潰瘍
患肢の外傷後や皮膚直下のリンパ管が拡張して水疱状(リンパ小疱)となった部分からリンパが漏れ出す場合があり、リンパ漏と呼ばれます。いったん漏出すると数日にわたる場合もあります。悪化すれば皮膚潰瘍をつくって非常に難治性となり、また細菌が入って蜂窩織炎の原因となるため、早期の治療が必要です。
リンパ漏とは違うかも知れませんが、私の見た患者さんでは、下腿の浮腫が顕著な場合、鍼を刺入してしばらく置鍼しておいたら、その部分にリンパが球になって漏出していることがありました。また別の患者さんは、鍼を抜刺した後、リンパの漏出が数日止まらないことがあり、これにより浮腫はかなり軽減しました。蜂窩織炎になることはありませんでしたが、浮腫の強い患者さんの場合、我々鍼灸師は注意が必要だと思いました。

上記が私が見聞きした患者さんの症状ですが、参考文献には、さらに以下の記述がありますので、列記しておきます。
④白癬症・皮膚感染症
⑤色素沈着
⑥関節機能障害
⑦がん治療後合併症
⑧リンパ管肉腫

今回は、ここまでにします。参考文献には、リンパ浮腫と関連して心性浮腫や慢性静脈機能不全症(CVI)についても記述がありますが割愛します。
次回から治療法について説明したいと思います。この稿の参考文献は以下です。
「リンパ浮腫の治療とケア」佐藤佳代子編者 医学書院 発行2005年4月


リンパ浮腫について 3” に対して2件のコメントがあります。

  1. かつみ より:

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    1. katsumi より:

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