リンパ浮腫について 4

リンパ浮腫治療の概要
リンパ浮腫の治療法には、保存的治療法と手術的治療法がありますが、満足できるような手術法はまだなく、現時点でのリンパ浮腫の治療方針としては、早期に発見して保存的治療法を開始して継続することが第一の選択といえそうです。

保存的治療法
保存的治療法の中心となるのはマッサージになりますが、その代表的なものがリンパドレナージという方法です。このマッサージ法は、デンマークの生物学者エミール・フォダー博士が1936年に発表したもので、これを医療的に体系づけたのがドイツのミヒャエル・フェルディ医学博士です。チーム医療として医師の指導のもと、理学療法士、マッサージ師により実施されます。その内容は、医師による診察からはじまり、基本となる4つの治療法である「スキンケア」「医療徒手リンパドレナージ」「弾性包帯や弾性圧迫衣による圧迫療法」「排液効果を促す運動療法」から構成されます。これを「フェルディ式複合的理学療法」といいます。
リンパドレナージには、この医療系のほかに美容系があるようですが、私の学んだのはこの「フェルディ式複合的理学療法」です。

症状に応じた2段階の治療ステップ
①集中的排液期
専門施設への入院、または通院しながら集中的に行います。皮下組織(組織間隙)に過剰に貯留した組織間液の排液を促すことを集中的に行います。治療の基本は医師の診察を受けながらのスキンケア、徒手リンパドレナージ(毎日または週4~5回)、弾性包帯による圧迫療法、排液効果を促す運動療法です。
②現状維持・改善期
外来またはセルフケアで治療します。スキンケア、徒手リンパドレナージ(週1~2回)、弾性包帯による圧迫療法、排液効果を促す運動療法です。これらは医師の診察を定期的に受けながら行います。私が施術できるのはこの段階に入ってからになります。

医療徒手リンパドレナージの禁忌
①一般禁忌
感染症による急性炎症、心性浮腫、心不全、下肢静脈の急性疾患(深部静脈血栓症、急性静脈炎など)、悪性腫瘍による浮腫(相対的な禁忌)
②局所禁忌
a.頸部のマッサージに関する禁忌
頸部の急性疾患、血圧上昇やホルモン分泌の急激な変化が危惧される場合(甲状腺機能亢進症、頸動脈洞症候群、不整脈、高齢者など)
b.腹部深部のマッサージに関する禁忌
腹部の急性・慢性疾患、妊娠中、腹腔内の手術や照射療法後など(放射線性腸炎、放射線性膀胱炎、大動脈瘤、腸閉塞症の既往がある場合、骨盤内静脈血栓症の既往がある場合)

今回は、ここまでにします。退屈なようですが、禁忌事項はとても大切なことです。リンパ浮腫であれば、すぐにリンパドレナージを受けられるというわけではありません。
今回の稿の参考文献は以下です。
「リンパ浮腫の治療とケア」佐藤佳代子編者 医学書院 発行2005年4月


リンパ浮腫について 4” に対して2件のコメントがあります。

  1. かつみ より:

    お願い

    1. katsumi より:

      ご覧いただき、ありがとうございます。
      いただいたコメントは、管理者である私が確認させていただきます。「承認」すれば、その内容がすべてのサイト上で公開されます。また私が「返信」すれば、その内容がすべてのサイト上で公開されます。
      メールアドレスは公開されることはありませんが、プライバシーとセキュリティを考慮して「コメント」と「返信」を公開することを控えさせていただきます。

コメントを残す

メールアドレスが公開されることはありません。 が付いている欄は必須項目です

ブログ

前の記事

リンパ浮腫について 3
ブログ

次の記事

リンパ浮腫について 5