リンパ浮腫について 1
乳がんや子宮がんになってリンパ節を郭清する(切り取る)とリンパ浮腫になってしまうことがあるとは、以前から聞いていたことですが、身近な人がその原因疾患になってしまい、いてもたってもいられなくなりました。2006年のことです。そこで見つけたのが「医療リンパドレナージセラピスト養成講習会」というもので、理論と実技で188時間の講習を受ける必要があります。(土・日)を利用して3ヶ月弱、そして実技・筆記・口頭試問の試験が2日間あります。受講料も安くありません。受講資格は医療国家資格保有者で医師・看護師・理学療法士・作業療法士・あん摩マッサージ指圧師ということでした。受講者の半数以上が看護師で、現場の要請で来ており、残りが理学療法士とあん摩マッサージ指圧師でした。
私の身近な人は幸いリンパ浮腫にはなりませんでしたが、このリンパ浮腫というのは手術をした直後から徐々になる場合もあれば、5~10年してからなる場合もあり油断できません。職業柄、浮腫の患者さんを担当したことはありますが、症例は限られています。リンパ浮腫の患者さんは少ないのかも知れませんが、それだけにリンパ浮腫を知らない人が多いのかも知れません。そこで今回のブログではリンパ浮腫を取り上げてみます。
浮腫とはどういう状態をいうのか?
私たちの体重の60%が水分であることは、よく知られていることですが、その内訳は細胞内液(40%)と細胞外液(20%)に分けられます。細胞内液とは、臓器や筋肉などの細胞一つひとつの中の液体のことであり、細胞外液とは、血液の血漿成分や組織液のことです。それでは、血液の血漿成分とは何でしょうか。血液は血球成分(45%)と血漿成分(55%)に分けられ、血球成分とは、赤血球・白血球・血小板という有形成分のことをいい、血漿成分とはフィブリノーゲンと血清という無形成分のことをいいます。それならば、組織液とは何でしょうか。それは血液の血漿成分が毛細血管から漏れだした液体のことです。
心臓から動脈を通じて送られた血液は、細くなった毛細血管から臓器や筋肉の細胞に供給されるわけですが、この毛細血管と細胞を介するものが組織液ということになります。この毛細血管と細胞の介する場を組織間質といい、組織液は組織間液と名前が変わります。ここで血液の酸素と栄養成分が供給されると同時に、細胞の中の二酸化炭素や老廃物が取り除かれて毛細血管に再吸収されます。そして静脈を通じて心臓に戻ります。
この組織間液の90%は毛細血管に再吸収され、残りの10%はリンパ管に吸収されて心臓近くまで送られて静脈に合流します。
浮腫とは、この組織間液が異常に増加している状態です。
浮腫の原因は?
この浮腫の原因は、①組織間液の供給量の増加、②組織間液の回収量の減少、③高齢や代謝異常による皮膚の弾性低下と考えられます。
原因となる疾患名をあげると心不全・腎不全・肝硬変・静脈瘤などですが、明らかな基礎疾患はないものの浮腫が見られる廃用性浮腫がもっとも頻度が高いようです。
リンパ浮腫とはどういう状態をいうのか?
リンパ管によって運ばれる体液をリンパと呼びます。先ほど説明したように二酸化炭素や細胞で不要になった老廃物、白血球などに分解された物質、リンパ球や好中球などの血液成分、侵入してきた細菌などを含みます。浮腫のメカニズムは先ほど説明した通りですが、リンパ浮腫とは国際リンパ学会の定義によると「リンパの輸送障害に組織間質内の細胞性タンパク処理能力不全が加わって高タンパク性の組織間液が貯留した結果起きる臓器や組織の腫脹」となります。
このリンパの輸送障害の原因は、先天的なリンパ管の発育障害がある場合や、後天的には手術、放射線治療、外傷などでリンパ管が損傷された場合などによります。また細胞性タンパク処理能力不全とは、組織間液中のリンパ球や好中球がウイルスや細菌の処理を充分に行えなかったことによります。少し説明を加えると、リンパ球はウイルスに対して攻撃したり、抗体を産生し(免疫反応)、好中球は細菌を取り込んで分解・消化します。それが充分に行えないということです。それで高タンパク性の組織間液が貯留し、臓器や組織が腫脹するということです。
今回は、ここまでにします。この稿の参考文献は以下です。
「リンパ浮腫の治療とケア」佐藤佳代子編者 医学書院 2005年4月発行
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